散文とか


帰宅途中に雨の中で桜が咲いてて、
むらっとしたので書いた散文。






桜の花びらは、雨に打たれてぼたぼたと散っていた。
普段見る、はらはらと華やかに散っていく優美な姿はそこにない。
春の雨を受け、ぼたぼたと、真下へと堕ちていく桜の花びらは、私にとっては見慣れないものだった。

私のビニール傘に、何枚かの花びらが張り付いている。
そしてまた、私の傘にも雨の音が張り付いていた。

ざらざら。ぼたぼた。ぽたぽた。ぱらぱら。
ざあざあ。ぱらぱら。ぼつぼつ。ぺたり。

私は帰路の足を止めた。

地面を見る。
じっと見る。
私の靴が踏みしめている地面をじっと見つめる。

目の前には桜の木があるが、私は知っている。
私の足元には、その木と同じぐらいの大きな根が地面を張っていることを。

私は想像する。
土が、コンクリートが、砂が、その他もろもろの不純物が、
透明になり、木の根だけが私の足元に浮かぶように存在している姿を。

木の根にはさまって、土の中にはいろいろなものが見える。
夏を待つセミの幼虫。何かの骨。モグラの穴。なにかの空間。

そして死体。

桜の木の下には死体が埋まっている。
これは信じていいことなんだよ。
なぜって、桜の木があんなにも美しいだなんて、
信じられないことじゃないか。

私は想像する。
私の足元が透明になり、
地球の奥の深くまで、覗きこめそうなほどの透明な色になり、
そこに木の根が浮かんでいる様を。

そして桜の木の根は死体をゆったりと抱いている。
桜の木の根の細かい枝は、
それはそれは形容しがたい、美しく醜い死体を抱いている。
まるで、人間の男と女がする「それ」のように、
指に指を絡まらせ、
そこからかつて命だったものを、
ゆっくりと、ゆっくりと、吸い上げていく様を想像する。
命を吸い上げていく様を想像する。
養分を吸い上げていく様を想像する。
美しいものが、醜いものを糧としている様を想像する。

・・・。

雨の音ではっとした。
そう、私は帰路の途中だったのだ。
私は地面から目を上げ、ビニール傘越しに桜の花を見る。

桜はきっと、明日には散ってしまうだろう。

<<了>>


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さくらって血の色ですよね
地元に咲いてるのがツツジよりも濃い赤だからでしょうかね、あまり好きな花じゃない…
と、さくらばっか描いてる私が言っても説得力ないですけれど…
さくらが好きなのではないのです。
ちしぶきが好きなのです。
あの緋が紫紺に垂れるとそれはもう美しく…

それはそうと、時雨屋さんはえっつぃですね
ふつう男女のまぐわいとまではそうぞうしませんよー
もーえっつぃだなー(もう一回じっくり読もう…)

No title

>>無言さん
桜は言うほど血の色ではない気がします…椿とかが、ボトッと音を立てて花が落ちるのとか、けっこうドキッとしますよね。なんか怖いじゃないですか。生首みたいで。
え?男女のまぐわい?なんのことですかーあーわからないわからないキコエナイキコエナイー
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