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流れよ我が涙、と魔法使いは言った。ローランドシナリオ


「流れよ我が涙、と魔法使いは言った。」で、お蔵入りになったローランドさんの回想シナリオを、ここで公開してみることにします。
ランタナさんの回想イベントが18000字に対して、ローランドさんは約5000字と少ない。
お蔵入りになった理由としては、

・ゲームの流れから外れてしまう
・いくらなんでも長い
・テキストの構成力と内容がちょっと納得がいってない

だったりします。
まぁ読み物としては、読めないこともないと思うし、そのままゴミ箱にポイするのももったいないので公開します。
ちなみに、本編のネタバレとかは特にありません。

では「続きを読む」からどうぞ。



【ランタナ】
……。
私の話は、この前ので終わりだよ。

【ローランド】
そうか。

【ローランド】
……。
じゃあ……。

【ローランド】
今度は、俺の話を聞いてくれるか。

【ランタナ】
いいよ。

【ローランド】
ふむ。
じゃ、どこから話そうかな。

【ローランド】
……俺の言葉に、訛りがあるのはわかるか?

【ランタナ】
訛り?

【ローランド】
俺はな、この国の生まれじゃないんだ。
山を3つぐらい越えた先の、隣の国。
そうだな、あの国は……

【ローランド】
音楽の国だな。


■1
町の中心に、巨大な時計塔がそびえる街。
治安も、この街よりだいぶ良いな。
街のつくりもきちんとしていて、通路には浮浪者もゴミも落ちてない。
毎晩決まった時間に、街灯夫が、街灯の明かりをつけに来る。そんな街だったよ。

あの街は、職人の産業が盛んだったんだ。
たとえば、楽器作りだとか。人形作りだとか。それから、時計……。
俺が生まれたのは、時計職人の家だった。

父親は、街でも腕のある時計技師。
朝から晩まで文字盤と歯車をいじっている、口数の少ない人間さ。
母親は、まぁ、取り立てて説明するような人間じゃねえな。
子供を育てること以外、趣味がない人間だよ。世の中にはそう言う人間だっているのさ。良い悪いの話じゃない。
さて、俺はその家の長男として生まれた。結局、弟や妹は生まれなかったな。
いいとこの坊ちゃん、って奴だったんだよ、俺は。
……いや、そんな顔するなよ。

物心つく前から、時計に囲まれてすごしていたよ。
ガキの頃は、懐中時計とか、親父の仕事用の工具なんかがオモチャ代わりだったな。
結局、時計屋に生まれた子供は時計屋になるしかないんだ。俺は手先が器用だった。
他の子供がそうであるように、父親の仕事を見て、手伝って、技術を盗んで、そうやって大人になっていくんだ。

店の前の大通りには、いつでも音楽が流れていた。
楽器を持った大人たちが、俺の家、時計屋の前で楽器を演奏しているんだ。
この街でも、たまに見るだろう。吟遊詩人たちさ。

マンドリンのケースを開けて、派手な服なんかを着て、歌なんかを歌ったりして、投げ銭をねだる。
ガキのころはよく、奴らの演奏を聞きにいったよ。目を輝かせて、な。

中心に時計塔のある、音楽と時計に溢れた街。
そんな町で、俺は子供時代を過ごした。
そして、俺が成人して、大人になってからも、ずっとあの町で暮らしていたんだよ。

……あの時までは。

■2
マンドリンに触ったのはいつのころだったかな。
たぶん、10歳ぐらいのときだよ。父親が、俺に楽器を買ってくれたのさ。

ああ、練習したとも。楽しかったな。
知っての通り、楽器って奴はいじってやると音が出るんだ。時計とは大きく違うところだな。
それから、練習すれば練習するほど、楽器の腕ってのは上手くなるんだ。これは絶対に裏切らない。
どんなに練習しても上手くできなかったフレーズが、次の日には簡単に弾けたりもする。かと思えば、昨日は簡単に弾けたフレーズが、今日はまったく上手く行かなかったりする。

……実際のところ、俺は、俺の楽器の腕なんてどうでもよかった。
ただ、マンドリンを弾くのが楽しかったのさ。
ただ、それだけだった。
ほんとうに、ただ、それだけだったんだ。

俺は父親の店を手伝いながら成長した。
たまに友達と遊びに行ったり、酒場にいりびたったり、マンドリンをいじったり、その倍ぐらい時計を作りながら、俺の年月は流れた。

若かった父は老い、幼かった俺は成人した。
その頃には俺は、町の技師たちには引けを取らない時計技師としての技術を身に着けていた。
そして、ガキのころから変わらず、俺が音楽が大好きだった。
プロになろうと思ったことはないな。
あんまり、人に聞かせることに興味はなかったんだ。ただ、自分が弾く事だけが好きなだけ。
だから、自分のマンドリンの腕が、どの程度のものなのか、よくわからなかった。

今でも考えるんだが、俺は、あのまま、ずっと一人でマンドリンを弾いていれば幸せだったのかもしれないな。

■3
父も、祖父もそうであったように、俺も、この街で生まれ、時計技師として働き、そして死んでいくだろう。ずっとそう思っていた。

ふと、こんな空想をしたことがある。
吟遊詩人になるのだ。
他の誰かがやっているように、楽器一本を持って、この街から出て行くのだ。
そうして、いろんな街を訪ねて、歩いて、楽器を演奏して、投げ銭でその日暮らしをして。
宿代代わりに演奏をすることもあるかもしれない。飯をご馳走になることもあるかもしれない。危険な山賊に襲われるかもしれない……。
そんな空想さ。夢物語。でも、心躍る空想だった。
だがそんなことを思い描くには、俺はちょっとばかり年を食いすぎていたな。

そうだな、ランタナ、今のお前より、少しだけ年上のときぐらいのときだよ、
あの事件が起こったのは。

……さて、どこから話そうか。

親父は頑固な人間だったから、俺があんまりにもマンドリンを弾くから腹を立てたこともある。きちんと仕事をしろ、集中しろ、ってね。
だから、家の中でだんだんマンドリンを弾く場所がなくなっていたのも理由のひとつさ。
ある日、知り合いにアンサンブルに誘われたんだよ。

「アンサンブル」の説明をするのは難しいな。
まぁ、合奏って言ってしまうのが早いかな。
他にもいろんな楽器をもちよって、たくさんの楽器で、たくさんの人間で、1つの曲を演奏するんだ。
ずっと俺は一人でマンドリンを弾いてきたから、初めてアンサンブルに参加したときは感動したよ。
鳥肌が立った。開いた毛穴から音が流れ込んでくる、あの感じ。それから自分の出す音も、そこに溶け込んでいく、あの感じ。

それからは、俺はアンサンブルでマンドリンを弾くようになっていった。
俺と、数人の仲間たちと、いろんな曲を、趣味で、たまに集まって、演奏するんだ。
知り合いも増えた。知らない技法も教えてもらった。演奏の方法を教えてもらうこともあったし、逆に教えることもあった。

たくさんの人間があつまるんだ、だからいろんな人間が存在するのは当然のことだよな。
俺を誘ってくれた、友人みたいな優しいやつ。
信じられないほど楽器が上手い、天才みたいなやつ。
ちょっとズレてて話しづらいが、打ち解けるとめちゃくちゃ面白い奴。
合奏の指揮をとったり、次の集合日時を決めたりする、リーダーみたいな奴。

それから、それらのすべてを、全部ぶち壊す奴。


■4
男と女って、どういうものだと思う?
全然別の生き物にも思えるし、やっぱり同じ人間、それ以外の何者でもないって思うときもある。

例えばな。腕力だったらどうだろう?
男のほうが、女よりも強い。体格だってそうだ。どういうわけかしらんが、生まれたときから、そういう風に作られてるんだ。
寿命だったらどうだろう?
女のほうが長い。そう言う風に昔から相場が決まってんだ、たいてい女のほうが10年か20年ぐらい長生きする。
じゃあ、楽器の腕だったらどうだろう?
結論から言えば、性別なんて関係ない。男が弾こうが女が弾こうが、どうでもいい。目を瞑ってしまえば、もうそれは音でしかない。どっちが上手いとかどっちが下手だとか、そう言うのはない。少なくとも、俺はそう思ってる。

俺たちの、マンドリンのアンサンブルは、長いこと続いた。
場所を変えながら。メンバーを変えながら、数年、俺たちは集まり続けた。
長いなじみの友達も居た。新規に参加したメンバーも居た。

俺はさっき言ったとおり、男と女の区別はしなかった。誰かが曲のミスをすれば攻めたし、音楽が上手な人間は思ったとおりに褒めたよ。女だから優しくするだとか、おだてるだとか、心にもないことなんか言ったことは、なかったな。

広い街だからな、本当にいろんな人間がいたよ。男もな、女もな。だから、そのアンサンブルに、楽器の演奏だけじゃなくって、例えば女を捜しに来るだとか、美人と仲良くなろうだとか、そう言う目的で来る奴だってたくさんいたよ。構いはしないさ、俺は合奏さえ出来ればそれでよかったんだから。
男女混合のメンバーだとな、中にはカップルが出来たり、別れたり、それが原因でアンサンブルにこなくなったり。
逆に、恋人に誘われてアンサンブルに加わったりする奴だとか、たくさんいたな。
……。

なぁ、ランタナ。お前もわかるだろう。
男女混合、ってのは、本当に難しいんだ。
こっちにその気がなくても、あっちにその気があったりするし、その逆だってある。
それを見極めて、求められなければ迫ってはいけないし、いわば腹の探りあいをしなければいけない。それには一定以上の知能を必要とするんだ。
それさえ超えられれば、友達になるのは簡単だ。男だろうが、女だろうが、唯一無二の友になれる。
だから、馬鹿には、無理なんだよ。そういうのはな。

まあ、よくある話だよ。男女混合のグループで、恋愛感情の、ごたごた。
なんだったかな。リーダーの男と、誰かと誰かが付き合ってて、それを誰かが寝取って、ごたごた。
思い出しただけでも嫌になる。メンバーの中の、たった数人が起こしたことなのに、その波は関係のないメンバーまで押し寄せてくるんだ。
ギスギスした空気。AとBが険悪な雰囲気なのに、俺はAともBとも話をしなきゃいけない。

アンサンブルの音は、徐々に合わないものになって言った。
あんなにも好きだったマンドリンが、俺にとっては、汚らわしいものに感じるようになって言った。



■5
なぁ、ランタナ。
俺とお前は、よく似ていると思うんだよ。
俺たちは、何にも悪いことなんてしてないのに、普通に過ごしているだけだったのに、周りのゴタゴタに巻き込まれて、大切な居場所がなくなるんだ。

しばらくたって、俺の参加していたマンドリンのアンサンブルは、解散した。
リーダーの男のやる気がなくなったんだ。そいつの女が寝取られたんだったっけな。詳しいことは忘れたよ。
はじめのうちは別のメンバーや、俺が、集まりの日取りや場所を確保していたが、それもだんだん疎かになり、なによりもゴタゴタを起した張本人が、何食わぬ顔で参加し、愚痴を言うだけ言って帰っていくものだから、
それから、もう、それだが、どんどん面倒くさくなっていって、そんな小さなことで、アンサンブルの集まりの機会はどんどん減っていって、ついにその集まりはなくなってしまった。

アンサンブルが解散すると同時に、俺はマンドリンをやめた。
あんなに好きだった楽器が、なんだか汚らわしいものに感じてしまった。
ひとりぼっちで部屋で楽器を弾くたびに、あの嫌な気分が甦って来るようだった。耳元で例の男や、例の女が、ずっと耳から愚痴や世迷い言をささやき続けているようだった。
耳をすませると、にぎやかな、アンサンブルの音楽が甦ってくるようだったが、それは幻想だった。
なんだか虚しくなってしまった。
あんなにも好きで、ずっと好きだった音楽が、あんな、くだらない男女の感情とやらで、汚されてしまったのが、本当に嫌だった。

そのうち、俺はマンドリンを売り払った。
父親も母親も喜んだ。遊びほうけていたせがれが、やっと家業に専念する、と。

虚しくなった。



■6
覚えていないんだよ。
俺の一生を左右する、いや、俺の人生だけじゃない、俺の両親や、周りの人間に、あんなにも影響を与えた事件なのに。
俺は妙にすっきりした気分で、そのことについて、よく覚えていない。

うん。まぁ、そいつだったんだよ。
アンサンブルが解散する、原因になった、張本人の女。
その頃には、彼女は独り身になっていて、もう何年も前の、古い知り合いの俺に、すりよって来ていた。
母親は喜んだ。独り身の俺に、相手が出来るってね。彼女はいいところのお嬢さんだったから、それも気に入ったんだろう。
俺は……俺は、彼女のことが好きだったのか、もう全然覚えていない。
と、いうのは、俺は、マンドリンを手放してからと言うものの、あまりにも世界が灰色で、何に対しても面白いとも思えなかったし、好きだとも、愛しているとも思えなかったからだ。
こちこちと、時計の針は進んだし、俺と彼女の時間も過ぎていった。
俺と彼女は婚約した。

時は灰色にすすんだ。
俺は仕事に専念した。時計の針は進んだ。
何もかもが灰色で、

* * *

【ランタナ】
……?
それで……?

【ローランド】
ふむ。
これで話はおしまいだよ。

【ローランド】
自分のことを話すって難しいな。
物語じゃないんだ。
オチもなければ、終わりもない。

【ランタナ】
……?

【ランタナ】
でも、ローランドは、
その、女性と婚約したんでしょ?

【ローランド】
そうだな……。
ある日のことだった。

【ローランド】
まぁ、事の顛末はこうだ。


* * *


婚約者だ。そろそろ籍を入れなきゃな、って思ってたし、周りもそうせかしてた。
俺は珍しく、入荷の用事がはやくすんで、婚約者の待つ家に急いだ。
いや、婚約者なんていえるほど、俺はあいつのことが好きじゃかったんだろうな。

だから、そう……。
家に帰って、扉を開けて、
婚約者と見知らぬ男が、裸でベッドの上に居るのを見たときに、
果たして、俺は、どんな顔をしたのか、覚えていない。
だから、あいつらが、そのときどんな顔をしていたのか俺は覚えていない。

裸の男が、腰にタオルだけを巻いて、俺の目の前にやってきた。
見知らぬ男だといったが、それは間違いだった。それは、かつて俺がアンサンブルをしていたときに、一緒に楽器を演奏していた、リーダー格の男だった。

実は、彼女とヨリを戻したんだ、みたいなことを、彼は言ったのだと思う。
ずいぶん前から、君と彼女が婚約していたのは知っていたけど、みたいなことを、奴は笑いながら言うんだ。
すげえ根性だよな。人の家でやっておいて、自信たっぷりにこういうんだぜ。
実は、彼女は僕のことが好きなんだ、ってね。
俺は、奥のほうで服を調えている彼女を見た。彼女は申し訳なさそうな、恥ずかしそうな、なんとも言えない顔をしていた。
つい燃えちゃって、みたいなことを男は言った。ほら、あのアンサンブルの時から、俺たちは、と彼は言った。

……うん。俺は、たぶん、一瞬のうちに、いろんなことを考えたのだと思う。子供の頃に見た吟遊詩人。初めて買ったもらったマンドリン。ずっと弾いていた練習曲。初めて演奏したアンサンブル。
それら全てが、こんな、くだらない、男女の痴情によって、汚されてしまったと言うこと。所詮、俺の言う「マンドリン好き」は、こんなくだらない出来事で嫌になってしまう程度の「好き」でしかなかったと言うこと。
彼は笑っていた。「ローランドなら許してくれると思って」と、彼は言ったような気がする。


それで。
気がつくと、手を洗っていた。
手についた血はなかなか落ちなかったな。
何せ二人ぶんだったから。



<了>


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